鎮痛効果

人間を含むほ乳動物は、唯一の栄養源である乳を介して、お母さんから赤ちゃんに色々なものを授けています。

そこには脂質・糖質・たんぱく質といった栄養素だけでなく、体の様々な働きを調節する生理活性物質も含まれています。

その中で、人類にとって特に大切な生理活性タンパク質が、ラクトフェリンと言われています。

ラクトフェリンは、大人の体では消化管内で分解されてしまうものの、消化機能が未熟な赤ちゃんの場合、分解されず血液に入って色々な働きをすることが分かっています。

ただしラクトフェリンも、胃の中で分解されないようにして、腸までラクトフェリンを届けるようにすると、そのまま体内に入って様々な効果を発揮することが分かっています。

特にラットを用いた実験で、痛みの情報を伝える中継点である脊髄に、ラクトフェリンを微量注入してみたところ、痛みが抑えられ、その鎮痛作用はモルヒネに匹敵するほど強力であることが分かりました。

さらにラクトフェリンの作用メカニズムを調べた結果、一酸化窒素の産生を高めることで、鎮痛シグナルを増幅することが分かりました。

その結果、モルヒネのような薬物だけでなく、エンドルフィン等の内因性オピオイドの鎮痛効果を高めていることが分かりました。

つまり、ラクトフェリンはオピオイド受容体に結合するのではなく、オピオイドの鎮痛シグナルを増幅することで鎮痛効果を発揮するので、平常時は何の作用もなく、モルヒネのように薬剤耐性や耽溺性がないのが特長です。

そのうえ動物実験で、モルヒネとラクトフェリンの併用について調べてみたところ、モルヒネの量を50分の1から100分の1まで減らしても、鎮痛効果が変わらないことが確認されています。

また別の動物実験で、精神的な不安もオピオイド関与であることが分かっており、ラクトフェリンの抗不安作用も実験的に確認されています。